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空調負荷計算の基礎:熱貫流率(U値)とは?

「この部屋には何馬力のエアコンが必要か?」
これを決めるのが空調負荷計算です。小規模な住宅や店舗であれば、部屋の広さだけで決める「概算(坪計算)」で済ませることもありますが、ビルや工場、サーバー室などのプロの設計では通用しません。壁や窓、人体、照明などから出入りする熱量を一つひとつ積み上げ、ピーク時の最大熱量を算出する必要があります。

この記事では、負荷計算の基礎となる「熱貫流率(U値)」と、主な負荷の種類について解説します。

1. 熱貫流率(U値)とは

壁や窓ガラスなどの「熱の通しやすさ」を表す数値です。単位は W/m²K(ワット毎平方メートルケルビン) です。
この数値が小さいほど、熱を通しにくい=「断熱性能が高い」ことを意味します。

代表的な部材のU値(目安)

  • 単板ガラス(3mm厚): U値 ≈ 6.0 W/m²K
    (熱がどんどん逃げていく)
  • 複層ガラス(ペアガラス): U値 ≈ 3.0 W/m²K
    (単板の約2倍の断熱性)
  • Low-E複層ガラス(断熱タイプ): U値 ≈ 1.5 〜 2.0 W/m²K
  • コンクリート打ちっ放し壁(150mm): U値 ≈ 3.5 W/m²K
    (意外と断熱性はない)
  • グラスウール断熱材入りの壁: U値 ≈ 0.3 〜 0.5 W/m²K
    (非常に熱を通しにくい)

最近の省エネ建築(ZEBなど)では、このU値をいかに小さくするかが設計の鍵となります。

2. 貫流負荷の計算式

壁や窓を通じて、室内外の温度差によって移動する熱(貫流負荷)は、以下の式で求められます。

Q = U × A × ΔT

  • Q: 熱取得量 [W]
  • U: 熱貫流率 [W/m²K]
  • A: 面積 [m²]
  • ΔT (ETD): 室内外の温度差(実効温度差) [℃]

計算例

夏場、外気温35℃、室内設定26℃(温度差9℃)のとき、面積10m²の窓ガラスから入ってくる熱量を計算してみましょう。

単板ガラス(U=6.0)の場合:
6.0 × 10 × 9 = 540 W

複層ガラス(U=3.0)の場合:
3.0 × 10 × 9 = 270 W

ガラスを変えるだけで、熱負荷が半分になることがわかります。540Wというのは、小型の電気ヒーター1台分に相当します。窓の断熱がいかに重要かが理解できます。

3. その他の負荷要素

空調機が処理しなければならない熱は、壁からの侵入熱だけではありません。詳細計算では以下の要素も合算します。

① 日射負荷

窓ガラスを突き抜けて直接室内に入ってくる太陽光エネルギーです。これは温度差(U値)とは無関係に発生します。
東西の窓では朝日や西日の影響が強烈で、南面の窓では庇(ひさし)の効果が大きくなります。ブラインドや遮熱フィルム(遮蔽係数)で対策します。

② 内部発熱

室内で発生する熱です。オフィスビルではこの割合が非常に高くなります。

  • 人体: 人間は1人あたり約100W(静座時)の熱を出しています。満員電車が暑いのはこのためです。
  • 照明: LED化で減りましたが、依然として熱源になります。
  • 機器: パソコン、コピー機、サーバーなど。特にサーバー室は冬でも冷房が必要なほど発熱します。

③ 外気負荷

換気のために取り入れる外気を、室温まで冷やしたり除湿したりするための熱量です。
外気は高温かつ「多湿」であることが多いため、潜熱負荷(湿気の除去)が非常に大きくなります。全熱交換器を使うことで、この負荷を大幅に削減できます。

まとめ

空調負荷計算とは、これら全ての熱の出入りを予測し、最も条件が厳しくなる時間帯(ピーク時)に合わせて機器能力を決める作業です。
Envikitsの空気線図ツール「Psychro Canvas」を使えば、外気負荷の計算(エンタルピー差 × 風量)を視覚的に行うことができます。

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