Envikits / 技術コラム
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配管・ダクトの摩擦損失計算:ムーディ線図と近似式の歴史

設備設計において、ポンプやファンの選定に直結する「摩擦損失計算」。適切なサイズの配管を選定しなければ、ポンプの能力不足で水が出なかったり、逆に過剰設計でコストが無駄になったりします。

古くから様々な計算式や図表が使われてきましたが、現在ではコンピュータを用いた厳密な計算が主流となりつつあります。この記事では、代表的な計算式であるHazen-Williams式とDarcy-Weisbach式の違い、そしてEnvikitsが採用しているColebrook-White式の重要性について詳しく解説します。

1. ヘーゼン・ウィリアムス式の功罪

日本の設備設計、特に消火設備や給水設備の分野で長年愛用されてきたのがHazen-Williams(ヘーゼン・ウィリアムス)式です。

P = 6.174 × 10^5 × Q^1.85 × C^-1.85 × D^-4.87

この式の最大のメリットは、「流速係数C」という定数を決めてしまえば、簡単に手計算ができる点にありました。関数電卓がない時代、C=100(古管)やC=130(新管)といった値を代入するだけで計算できるこの簡便さは革命的でした。

Hazen-Williams式の限界

しかし、この式には以下のような重大な制約があります。

  • 水以外の流体には使えない: 粘性の項が含まれていないため、空気(ダクト)や油、温水などの計算には適していません。
  • 水温の影響を無視している: 水は温度によって粘性が大きく変わりますが、この式では考慮されません。
  • 適用範囲が限定的: 比較的大口径(50A以上)で、流速が一般的な範囲であれば近似しますが、小口径や低流速・高流速域では誤差が大きくなります。

2. 理論的に正しいダルシー・ワイスバッハ式

流体力学的に最も普遍的で正しいとされるのが、Darcy-Weisbach(ダルシー・ワイスバッハ)式です。

ΔP = λ × (L / D) × (ρv² / 2)
  • ΔP: 圧力損失 [Pa]
  • λ (lambda): 管摩擦係数 [無次元]
  • L: 配管長さ [m]
  • D: 配管内径 [m]
  • ρ: 流体密度 [kg/m³]
  • v: 流速 [m/s]

この式は、流体の種類(密度ρ)や配管の長さL、流速vに関わらず成立します。EnvikitsのDuct System HelperやPipe System Helperも、基本的にはこの式に基づいて圧力損失を計算しています。これにより、空気ダクトであれ、冷温水配管であれ、同一の理論で計算が可能になります。

しかし、ここで最大の問題となるのが、式の先頭にある管摩擦係数 λ(ラムダ)をどうやって求めるか、という点です。

3. ムーディ線図からColebrook-White式へ

管摩擦係数 λ は一定の数字ではありません。「レイノルズ数(Re)」と「管内相対粗度(ε/D)」によって複雑に変化します。

  • レイノルズ数 (Re): 流体の慣性力と粘性力の比。流速が速いほど、また粘性が低いほど大きくなります。
  • 相対粗度 (ε/D): 配管内面のザラザラ具合(絶対粗度 ε)と、配管内径(D)の比率。

この2つのパラメータと λ の関係を図示したものが、教科書でおなじみのムーディ線図(Moody Chart)です。

かつてエンジニアは、定規を使ってムーディ線図から目視でλを読み取っていました。しかし、これには読み取り誤差がつきまといます。そこで登場するのが、ムーディ線図を数式化したColebrook-White(コールブルック・ホワイト)式です。

1 / √λ = -2 log₁₀ [ (ε / 3.7D) + (2.51 / (Re √λ)) ]

この式をよく見ると、左辺にも右辺にも求めたい「λ」が含まれています。これは「陰関数」と呼ばれ、単純な代入計算では解くことができません。値を求めるには、仮のλを入れて計算し、誤差がなくなるまで繰り返す「収束計算(反復計算)」が必要です。

4. Envikitsのアプローチと実務メリット

手計算では困難なColebrook-White式の収束計算ですが、コンピュータにとっては一瞬の処理です。EnvikitsはWebブラウザの計算能力を活用し、この厳密な計算を行っています。

メリット1:あらゆる流体・温度に対応

水の温度が変われば密度と動粘性係数が変わり、レイノルズ数が変化します。Envikitsでは0℃〜100℃の水温入力に対応しており、冷水(5℃)と高温水(80℃)の摩擦抵抗の違いも正確に反映します。

メリット2:材質ごとの粗度を考慮

塩ビ管(VP)の内面はツルツルしており、古い鋼管(SGP)はザラザラしています。この違いは「絶対粗度(ε)」として計算に組み込まれます。

  • 硬質塩化ビニル管: ε ≈ 0.01mm
  • 新品の鋼管: ε ≈ 0.05mm
  • 亜鉛鉄板ダクト: ε ≈ 0.15mm

これにより、材質による流れやすさの違いも定量的に評価でき、より経済的な配管サイズ選定が可能になります。

まとめ

手計算の時代には「使いやすさ」が優先され、Hazen-Williams式などが重宝されました。しかし、誰もがPCやスマホを持つ現代においては、より物理現象に忠実なDarcy-Weisbach + Colebrook-White式を用いるのがエンジニアリングの誠実な態度と言えるでしょう。

Envikitsを使って、理論に裏打ちされた正確な設計を体験してみてください。

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