配管同士やバルブ、機器を接続するために使われる「フランジ」。一見するとただの円盤ですが、圧力ランクや座面の形状には厳格な規格があり、選定を誤ると漏水などの重大な事故につながります。
特に改修工事などで古い設備に接続する場合、「ボルト穴が合わない」「締め付けたらバルブが割れた」といったトラブルが後を絶ちません。この記事では、JISフランジの基本規格と、現場で特に注意すべき「座面形状」の組み合わせについて、トラブル事例を交えて解説します。
1. 圧力ランク(5K, 10K, 20K)とは
JISフランジには、耐えられる圧力に応じた「呼び圧力(K)」が設定されています。主なものは以下の3つです。
- 5K: 主に雑排水、通気、消火栓の放水圧のかからない部分など、比較的低圧(静水頭圧程度)の配管に使用されます。厚みが薄く軽量です。
- 10K: 空調・衛生設備の標準的な仕様です。給水、冷温水、冷却水など、ポンプで加圧される一般的なラインに使用されます。最高使用圧力は概ね1.0MPa(約10kgf/cm²)です。
- 20K: 高層ビルの低層部給水(高圧がかかる)や、蒸気配管、地域冷暖房の一次側など、高圧ラインに使用されます。ボルト本数が多く、厚みも非常に厚くなります。
ボルト穴の違いに注意
重要なのは、「圧力ランクが違うと、ボルト穴の位置(PCD)や数が合わないことが多い」ということです。
例えば100Aのフランジの場合:
- 10K: ボルト数 8本 / PCD 175mm
- 20K: ボルト数 8本 / PCD 185mm
このように、同じ呼び径・同じボルト本数でも、PCDが異なるためボルトを通すことができません。「現場で穴を広げればいい」という考えは、フランジの強度を著しく下げるため厳禁です。
2. 座面形状:FFとRF
フランジ選びで最もトラブルになりやすいのが、パッキンが当たる「座面(ガスケット座)」の形状です。
FF(Flat Face):全面座
フランジの表面がボルト穴の外側まで平らになっているタイプです。主に鋳鉄製(FC)のバルブや、強度の低い塩ビ管フランジなどに使われます。パッキンもボルト穴が開いた「全面パッキン」を使用するのが基本です。
RF(Raised Face):平面座
ボルト穴の内側(パッキンが当たる部分)だけが一段高くなっているタイプです。鋼製フランジの標準仕様であり、高い面圧をかけてシール性を高めることができます。パッキンはリング状の「内面パッキン」を使用します。
3. 鉄則:鋳鉄バルブ(FF)に鋼製フランジ(RF)をつないではいけない
これは配管施工における最大のタブーの一つですが、意外と知らずに行われていることがあります。
鋳鉄製のバルブ(ねずみ鋳鉄 FC200など)は、鋼に比べて引張強度が低く、衝撃に弱い「脆い」素材です。これらのバルブのフランジは通常、FF(全面座)になっています。
ここに、配管側のRF(平面座)フランジを接続してボルトを締め付けるとどうなるでしょうか?
- RFの出っ張った部分(内側)だけがバルブに当たります。
- ボルトは外側にあるため、締め付けるとフランジの外周を引き寄せようとする力が働きます。
- 内側が支点、ボルトが力点となり、「てこの原理」でバルブのフランジに強烈な曲げモーメントがかかります。
- 耐えきれなくなった鋳鉄バルブのフランジが、「パキッ」と根元から割れてしまいます。
通水テスト中にバルブが割れれば大惨事です。鋳鉄バルブに接続する場合は、相手側の鋼製フランジもFF加工したものを使うか、もしくはRFフランジでも隙間を埋めることができる「全面パッキン」を使用し、片締めにならないよう慎重に施工する必要があります。
まとめ
フランジは単につなぐだけの部品ではありません。圧力、材質、座面形状のすべてが適合していなければ、漏水や破損の原因となります。
Envikitsの「Material Spec Viewer」では、各規格のフランジ寸法(外径、PCD、ボルト穴径、ボルトサイズ)を網羅しています。改修工事で既設フランジの規格を調べる際や、発注前の確認にぜひ活用してください。